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第38回 はなし亭 菊之丞・文菊・こみち勉強会

4月12日 本所地域プラザBIGSHIP

この会は三人がネタ下しをしている勉強会。一人が一席づつ、じっくりと取り組む。今回で38回目なので、かなり長く続けている勉強会だ。

以前は湯島天神で行っていたようで、今はこの会場がホームグランド。この会場は我が家から徒歩10分という場所にあり、8時半には終わるといことで、初めて参加。

受付には、菊之丞師匠と文菊師匠のお二人自らが立ち、入場客をお出迎え。勉強会というだけあってご自身たちで運営されているようだ。三席ともネタ出しされている。

柳亭こみち「だくだく」

本当に三人だけで運営されているようで、前座もなし。まずは、こみちさんが登場、マクラでは真打昇進のご挨拶。

真打ち昇進後の名前が決定いたしました、柳亭こみちのまま昇進いたします。笑いとともに大きな拍手。私も良い芸名だと思う。この名前は師匠が考えた名前の最高傑作で、画数が落語家にとって最も良い24画で素晴らしいと小三治師匠にも褒められたそうだ。馴染んだお名前での真打昇進、師弟で悩まれたようだが、結果的には良い選択だと思う。

私は、こみちさんは女流の中でも最も本格派で、若手女流のナンバーワン落語家だと思っている。女流落語家と呼ぶのは、何だか区別してるような気がして、あまり好きではないのですが。

登場人物のセリフに切れがあり、江戸っ子の風情が感じられる。聴いているうちに女流ということを意識しなくなる、そんな語り口。ネタ下しとは思えない、聴いていて小気味いい一席だった。

古今亭文菊大山詣り

このところ連続して聴いている文菊師匠。この日も貫禄を感じさせる落ち着いた高座ぶり。

ほとんど坊さんのような丸めた頭なので、この噺にぴったりの風貌の文菊師匠。熊五郎が頭を丸められた後に毛がないと気づくところは、髷がないと驚く様子がリアルに感じるのだ。

噺はネタ下しだからか、余計なクスグリもない定番の本寸法な感じ。どこか、志ん朝師匠の大山詣りを彷彿とさせる一席。セリフなどもほとんど同じような気がする。志ん朝師匠の型を踏襲されているのは、私的にはうれしい。

仲入り

古今亭菊之丞「茶金」

ネタ数が多い菊之丞師匠でも、この噺がネタ下しとは意外な感じ。

この噺は油屋の江戸弁と茶道具商の金兵衛の京言葉が交じりあうという演者にとっては難しい噺。特に慣れない関西弁、それも京言葉で違和感ないように話すのはかなり難しいと思う。関西出身の人が聴くと気になるところはあるかもしれないが、東京の観客にはそれほど違和感なく聴けた。この辺りは、さすが器用な菊之丞師匠。

もし、京言葉に違和感があっても、それは文化の違いの面白さに通じるところなので、こんな京言葉もありかなあ、そう納得するのが落語である。落語に登場する田舎者の権助や杢兵衛お大尽が話す田舎言葉は、地域の特定できない架空の田舎言葉、東京人が思うところの田舎言葉であって、落語世界独特の方言であるのと同じ理屈だ。

茶金の鷹揚として大人の風情と対極のひと山当ててやろうという魂胆の油屋、その二人が茶碗を巡って交わす会話の場面は見事。商売人の矜持で茶金は山師のような油屋を優しく諭す。二人の人間性が良く表れていた。

後半、次から次へと茶碗の値が上がって価値が高まっていく様子が楽しい。この場面は、短冊に短歌を書いたりして、セリフが難しい場面。菊之丞師匠は、この後半はゆったりした前半と違ってやや急いだ感じがあった。この辺りが、ネタ下しならではの感じだろうか。完璧主義に思える菊之丞師匠も、勉強会ならではの試行錯誤の姿。こんな姿が見られるのも勉強会ならではの醍醐味。